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「口譯萬葉集のはじめに」(『折口信夫全集第四巻』p3-) 2018.05.14 21:24

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ようやく長かった四巻が終わり、万葉集に入った。折口の万葉集は、口約という手法をとっている。つまり折口が語ったものを書き取らせ、それを本にしている。その試みとしての評価は、勉強不足でよくわからないが、とっつきやすいのは間違いない。  

折口はこの序文で、國學院で「木村博士」と「畠山翁」から万葉集の講義を受けたと述べている。「木村博士」は木村正辞、「畠山翁」は畠山健のことらしい。前者は東大、後者は國學院の教授とのこと。どちらかといえば、若き日の折口は畠山の講義に心引かれたらしい。

「わたしの若い研究欲を唆るやうな、暗示に富んだ講義は、寧、『学商』の名を負うてゐられた、畠山翁にあつた。而も、二人とも、今では、亡くなつてしまはれた。萬葉に就て、疑問が起つた時、教へを請うべき先生は、もう、何處にもゐられないのである。わたしは、勝手に、自身の道を、すこしづつでも墾いて行かねばならぬやうになつた。力強い援けもなく、此确地に、かうして、わびしう延びて行った芽は、この書物である。わたしは、いとほしいこの草を、更に、培ひ養うて行かねばならぬ」(p4-5)

所々に現れる折口自身の方言は、わざとそのままにしてあるらしい。『折口信夫全集第四巻』の月報では、そのことが評価されてもいる。確かにやわらかい印象を与えるように思える。今までの作品のなかにも、多く用いられていたから違和感もない。  

この『万葉集』は、一日ひとつの巻を読んだとしても、半月以上の仕事になりそうだ。実はすでに巻一を読み終えている。民俗を扱った諸作品に比べると、私の興味は薄いようだ。抜き書きが少なく感じる。  

なお、『古代研究』の後書きの抜き書きは未だに終わっていない。

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